乱《きょうらん》を演じていたのである。
九 異変(※[#ローマ数字1、1−13−21])
恭一からは、それっきり何の音沙汰《おとさた》もなかった。次郎には、日がたつにつれ、それが気になって来た。
自分であんな返事を出しておきながら、それに対して、恭一から押《お》しかえして、また何か言って来るのを期待するのは、おかしなことだし、むろん、返事を書くときに、それを予期していたわけでは毛頭《もうとう》なかった。それにもかかわらず、かれは、三日とたち、四日とたつうちに、朝夕二回配達される郵便物がしだいに待ちどおしくなり、その中にそれが見つからないと、失望もし、何か欺《あざむ》かれたような気にさえなるのだった。
しかし、また一方では、自分がそんな気持ちになるのを、するどく反省もした。そして反省の結果は、いつもたえがたい自己|嫌悪《けんお》と自嘲だったのである。
何という弱さだ。いや、何という見ぐるしさだ。いったい自分は、これまで自分を育てるために何をして来たというのだ。白鳥会以来の苦心と努力とは、いったい何を目あてにしたものだったのだ。こんなふうでは、自分は、里子《さとご》から帰
前へ
次へ
全436ページ中266ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
下村 湖人 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング