みんなにやにや笑っているだけで、返事がない。
「あたしには、おおよそわかりますわ。あててみましょうか。飯島さんはおありでしょう?」
 飯島は、めずらしく子供のようにはにかみながら、しばらく頭をかいたあとで、こたえた。
「あります。」
 みんなが拍手《はくしゅ》した。拍手にまじって、だれかがとん狂《きょう》な声で叫《さけ》んだ。
「小母《おば》さんはさすがに体験家だなあ。」
 それでまた笑いが爆発《ばくはつ》した。朝倉夫人も笑いながら、
「大河さんは?」
 みんなは、飯島のときよりも興味深そうな目をして、一せいに大河を見た。大河は、しかし、近眼鏡の奥《おく》に、どこを見るともなく目をすえ、とぼけたようにこたえた。
「ありませんね。うっかりして、恋《こい》をしたこともまだないんです。だから、ぼくは入塾《にゅうじゅく》してから一度も手紙を書いたことがありません。さびしい人間ですよ。」
 みんなは腹をかかえて笑った。中には、たべかけた芋を吹《ふ》き出したものもあった。朝倉先生も夫人も、むろん笑った。ただ次郎だけは、どうしても笑えなかった。かれには、そんなことをいった大河がいよいよ気味わるく感
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