と、今日がレコードだったよ。故郷をはなれて二週間近くにもなると、そろそろ綿々たる手紙が書きたくなるらしい。ことに今日の手紙には異性あてのが多かった。それも差出人《さしだしにん》とは姓《せい》のちがった宛名《あてな》が多かったようだ。」
 すると、にぎやかな笑い声にまじって、いろんな野次《やじ》がとんだ。
「時局がら、憂《うれ》うべき傾向《けいこう》だ。査問会《さもんかい》をひらいたら、どうだい。」
「しかし、いったい、郵便物当番に、異性あての手紙が何通だなんていうことまで調査する権限があるのかね。」
「まさか開封《かいふう》して見たんではないだろうな。」
「とにかく、発信人の名前ぐらいは公表してもよさそうだ。」
「これからは、各人別に異性あての手紙の累計をとるべきだよ。」
 そういった調子である。
 朝倉夫人も、こんな時間には、かならず顔を出し、茶をついでまわったりする習慣になっていたが、一通り野次がとんでしまって、笑い声がおさまったころ、夫人は、みんなの顔を見まわしながら、真顔《まがお》になってたずねた。
「それはそうと、みなさんの中に、もう奥《おく》さんがおありの方は、どなた?」

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