見おろした。大河は、まだ心配そうな顔をして次郎を見あげている。次郎は、大河の顔に例の笑いが浮《う》かんでいなかったので、ほっとした気持ちだった。
「ほんとうにだいじょうぶです。何でもなかったんです。」
次郎はもう一度そう言って、すぐ鋸をひきはじめた。
大河がそこいらにあった木の枝を運び去ったあと、次郎は、まるで質のちがった二つのにがい味を、同時に心の中で味わいながら、黙々《もくもく》として鋸をひいた。永久に恋《こい》を失ったということも、にがい味のすることだったが、弱い人間として大河無門の前に立たされているということも、それにおとらず、にがい味のすることだったのである。
三時になると、みんなは草っ原に腰《こし》をおろして、お茶をのみ、ふかし芋《いも》を食った。一人あたり一日五十銭の食費の中から、こうした場合のおやつ代をひねり出すのは、炊事部《すいじぶ》に任された権限なのであった。
郵便物当番も、もうむろんそのころには帰って来て、仲間に加わっていた。かれは、芋を頬張《ほおば》りながら、みんなに今日の発信数と、これまでの累計《るいけい》とを報告したあとで、言った。
「封書だけで言う
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