っていた自分のまえに思いがけなく一つの燈火《とうか》がともされたのに、その燈火の正体をよくつきとめもしないで、自分はあわててそれを吹《ふ》き消してしまったのではないか、と思うと、やり場のないくやしさと、さびしさとが、胸の底からつきあげて来るのだった。
「どうしたんです。気分がわるいんじゃありませんか。」
 だしぬけに木の根もとから声をかけたものがあった。大河無門の声だった。大河は枝を運ぶ役割にまわっていたのである。
 次郎はぎくりとした。大河無門の声が、この時ほど次郎の耳に気味わるく響《ひび》いたことは、おそらくこれまでにもなかったことであろう。
「いいえ、何でもないんです。……鋸屑《おがくす》が目にはいったような気が、ちょっとしたもんですから。」
 次郎は、そう言って、わざわざ目を手の甲《こう》でこすった。しかし、つぎの瞬間には、そんなごまかしをやった自分が、たまらなくいやになり、思わず肩《かた》をすくめた。
「おりて来ませんか。鋸屑がはいっているなら、はやくとったほうがいいですよ。ぼく、見てあげましょう。」
「ええ、もうだいじょうぶです。」
 次郎は、目をぱちぱちさせながら、大河を
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