考えなおそう。)
自転車が動きだした瞬間《しゅんかん》、かれはそう決心した。そして、手をふりあげて郵便物当番の名を呼んだ。かれは思いきり大声をあげたつもりだった。しかし、その声は、咽《のど》の奥《おく》から何かの力で引きもどされたように、変なうなり声になっただけだった。郵便物当番は、むろん、ふり向きもしなかった。かれは、玄関をはなれると、くぬぎ林のまえの広場を斜《なな》めに、正門のほうに向かって自転車の速力をはやめた。
次郎には、もう一度、大声をあげてそれを呼びとめるいとまがなかった。いとまがなかったというよりも、心のゆとりがなかったといったほうが適当であった。かれは、気ぬけがしたように、ぽかんとしてそのあとを見おくっていた。そして、自転車が正門を出て見えなくなると、急にがくりと首をたれ、両腕で本の幹を抱《だ》いた。
いっさいは終わった。道江の問題に関するかぎり、いっさいは終わった。自分のとった方法が賢明《けんめい》であったにせよ、おろかであったにせよ、これでほんとうにいっさいは終わったのだ。と、いったんはあきらめたようにそう思うのだったが、しかし、ながいこと闇《やみ》にうずくま
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