ってはみるが、しばらくたつと、いつのまにか、また同じ仮定がかれの心にしのびこんでいるのだった。そして、
(何もあわてて返事を出す必要はない。出してしまったらもう取りかえしがつかなくなるのだ。)
と、そう考えて、いそいで木をおり、事務室の発信ばこのほうにかけつけたくなったことも、一度や二度ではなかった。
しかし、また一方では、恭一の手紙を信じようとする自分の甘《あま》さを思った。それを信じて返事をおくらしたために、自分の本心を恭一に見ぬかれるということは、かれの自尊心がゆるさなかったのである。
かれは、枝を一本おろすごとに、自分の腕時計《うでどけい》を見た。最初見たときには、二時間半までには、まだ四十分以上の時間が残されていたので、かれの気持ちには、かなりのゆとりがあった。しかし、十五分、十分と、残された時間が少なくなるにつれ、かれの焦躁感《しょうそうかん》はしだいに高まって行った。そして、いよいよその時刻が来て、郵便物当番が塾堂の玄関に自転車をひき出して来たのを見ると、かれはもう、枝をおろすのを忘れて、何かにつかれたように、一心にそのほうに目をこらしていた。
(やっぱり、もう一度
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