いくぶんちがっている点があるとすると、それは、彼女《かのじょ》がこの数年の間に読書によってその当時よりはるかに尊敬すべき女性に成長しているということだ。――」
次郎は、のんだ息を大きく吐《は》いた。そのあと、深い呼吸がしばらくとまらなかった。
「こう言うと、君は、今度はぼくのほうが本心をいつわっていると思うかもしれない。しかし、その疑いを解くのはさほど困難ではない。そのたしかな証拠は、もし君がちょっと骨折ってそれをさがす気にさえなれば、すくなくとも二つは見つかるはすだ、その一つは、先月はじめ、ぼくが父さんに出した手紙であり、もう一つは、それから少しおくれて朝倉先生に出した手紙だ。どちらも、道江との婚約問題についてぼくの考えをたずねられたのに対する返事だが、父さんあての返事には、婚約は、相手のいかんにかかわらず、自分が社会的に独立する目あてがはっきりするまでは絶対にやりたくない。もし道江がそれまで自由な立場にあれば、その時になって、あらためて考えてみることにしたい。しかし、そういうことを先方に通じて、それが少しでも道江を拘束《こうそく》することになっては困るから、いちおうこの話は、打ち
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