江にわかれた時のかれの気持ちが、未練以外の何ものでもなかったことに気がつくと、むしろ、恭一に自分が高く評価されたような気もして、その反発はすぐ羞恥《しゅうち》と自嘲《じちょう》に代わった。
「むろん、ぼくは、君が喜んで道江と別れたとは思わない。君にとっては、それはおそらく退学などとは比べものにならないほどの大きな苦痛であったろうと想像する。それにもかかわらず、君はそれをしのんで道江とわかれる決心をした。そして、その原因になった事情が、おそらくぼく自身に関係したことであるだろうことに思い到《いた》ると、ぼくはいても立ってもいられないような気がして来たのだ。今さら何をいうのか、と君はあるいは怒るかもしれない。しかし、もしあの当時、君の道江にたいする気持ちに、ぼくが、少しでも気がついていたとしたら、君にこんな苦痛をなめさせないでもすんだにちがいない。そう思うと、ぼくは実際たまらなくなるのだ。ぼくは誓《ちか》っていうが、あの当時、道江にとくべつな関心をもっていたわけではなかった。ぼくの道江に対する気持ちは、親類のおとなしい女の子という以上には出ていなかったのだ。また、婚約《こんやく》のことにし
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