う返事さえ出していないというではないか。もし事実その通りだとすると、これほど変なことはない。というのは、ぼくの知っているかぎりでは、君は上京のその日まで道江とは十分親しくしていたし、まさか君が汽車に乗って東京につくまでの間に、仲違《なかたが》いをするような原因が発生するとは思えないからだ。そこで、ぼくは、君の道江にたいするこの変な仕打ちの意味を真剣《しんけん》に考えてみた。その結果、ぼくの下《くだ》した判断はこうだ。君は道江を深く愛している。しかし、それはある事情によって実を結ばない。だから君は永久に道江とわかれる決心をした、そしてその機会を上京に求めたのだと。ぼくは、実は今になって思うのだが、君が卒業間近になって中学を退学しなければならなくなったのを、あんがい平気でしのび得たのは、それが道江からのがれる一つの機会を君に与えることになったからではあるまいか――」
次郎の心は、一瞬、強く反発《はんぱつ》した。かれにとっては、退学の問題と道江の問題とは何の関係もないことで、正義感によって動いた自分の行動を、一女性に対する私の感情と結びつけて考えられるのは全く心外だったのである。しかし、道
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