やめるかもしれないよ。」
「え?」
と、恭一は、しばらく穴のあくほど次郎の顔を見つめていたが、
「何か失敗した?」
「失敗なんていうことはないけれど、ぼく、もっと考えてみたいことがあるんだ。」
「塾がいやになったんじゃないだろうね。」
「そんなことないさ。そんなこと――」
と、次郎はいかにも心外だというように、口をとがらしたが、
「要するに、ぼく、今のままじゃあ、不適任だという気がするんだ。」
「どうして?」
「どうしてって――」
と、次郎は目をふせたが、その視線の中には、白い足袋《たび》をはいた道江の足がはっきり浮《う》かんでいた。かれは、あわてたようにそれから眼をそらし、
「ぼく弱すぎるんだ。自信がなくなったんだ。だから、もっと自分を鍛《きた》えてみたいんだ。」
「自分を鍛えるのに、助手をやめる必要はないだろう。やめたら、かえって――」
「ぼく、孤独《こどく》になってみたいんだよ。」
「孤独に?」
「ぼく、実は、大河君がうらやましくなったんだ。大河君には、ぼくとちがって、朝倉先生のような、先生らしい先生がなかったらしい。大河君の力は孤独から生まれた力なんだ。ぼくはこれまで、あ
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