》しながら、恭一に言った。
「大河君は、普通《ふつう》の塾生とはちがって京大を出た人だよ。専門は哲学《てつがく》だ。しかし概念《がいねん》の哲学者じゃない。孔子《こうし》とかソクラテスとかいった型の、いわゆる哲人だね。今日は居残っていてもらってちょうどよかった。大いに教えてもらうんだな。」
ごちそうはさつま汁《じる》だった。あたたかい日ざしの中でそれをすすっていると、汗《あせ》をかきそうだった。食後の蜜柑《みかん》が、舌にひやりとして甘《あま》かった。
朝倉夫人が食卓のあとかたづけをはじめると、道江がそれを手伝った。そのあとは、またいっしょになって話がはすんだ。話題は、ひる前の空林庵での懐旧談《かいきゅうだん》とはちがって、人生論めいたことを中心に、民族とか、国家とか、階級とかいうことにまで及《およ》んだ。おもに口をきいたのは、先生と恭一と大河の三人だった。中でも大河が主役の観《かん》があった。それは、朝倉先生も、恭一も、大河を相手に話しかけがちだったからである。
次郎はほとんど聞き役だったが、かれの関心の中心もやはり大河だった。かれはまず第一に、大河の頭が論理的にもすばらしく緻
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