ようにこたえた。
「めずらしいお客さまでしょう。」
「ええ。」
 次郎は、しかし、道江のほうは見ないで恭一に向かってわざとらしく、
「やあ。」
 と声をかけ、自分のすわる場所を眼でさがした。
「どうぞ、あちらに。」
 朝倉夫人に指さされた座ぶとんは、恭一と道江との間にはさまれていた。入り口に近いほうに夫人と道江、床《とこ》の間《ま》に近いほうに先生と恭一とが席を占《し》めていたのである。
 かれがまだ尻《しり》をおちつけないうちに、
「次郎さん、しばらく。」
 と、道江が座ぶとんを半分すべって、あいさつをした。
「やあ、しばらく。」
 次郎も、すぐあいさつをかえしたが、道江の顔をまともには見ていなかった。かの女《じょ》の羽織《はおり》や帯の色が、美しい雲のように、うずを巻いて、眼のまえに浮動《ふどう》するのが感じられただけだった。
「道江さんにお会いするのは、私も家内も今日がはじめてなんだよ。君のお父さんからのお手紙や何かで、お名前だけは、すこし前から存じていたんだがね。」
 朝倉先生が次郎に言った。次郎は、固くなって、
「はあ。」
 とこたえたきりだった。しかし、心の中では、父が朝倉
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