で強く否定した。しかし、否定した心そのものが、やはり、ふだんの秩序を失った心でしかなかったのである。
 事務室の柱時計《はしらどけい》がゆっくり、十時をうった。次郎はかぞえるともなくその音をかぞえていたが、かぞえおわると、やにわに立ちあがった。
 二人が午前中に来るとすれば、もうそろそろ来るころだ。めいった顔は見せたくない。いっそ門のそとまで出て愉快に自分のほうから迎《むか》えてやろう。あとはあたって砕《くだ》けるまでのことだ。――かれは冒険《ぼうけん》とも自棄《じき》ともつかない気持ちで、自分自身をはげましたのだった。
 すると、ちょうどその時、事務室に人の足音がして、仕切りの引き戸を軽くノックする音がきこえた。
「どなた?」
 次郎が、いぶかりながら戸をあけると、そこには大河無門が立っていた。
「おや、外出しなかったんですか。」
 次郎は大河の顔を見ると、救われたような、こわいような、変な気になりながら、つとめて平静をよそおってたずねた。
「ええ、べつに出る用もなかったので……」
「でも、道案内によく引っぱり出されなかったことですね。」
「やんやと頼《たの》まれましたが、断わること
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