ぎり、朝食後から夕食前まで自由外出ということになっていた。東京見物を一つの大きな楽しみにして上京して来た塾生たちは、最初の夜の懇談会《こんだんかい》で、ほとんど議論の余地なく、満場|一致《いっち》でそれを決議していたのだった。
 事務所にそなえつけてあった何枚かの東京地図は、すでに二三目前から各室で引っぱりだこだった。土曜日の晩には、炊事部《すいじぶ》はみんなの弁当の献立《こんだて》をするのに忙しかった。次郎が道順の相談のために、各室に引っぱりこまれたことはいうまでもない。そして、いよいよ日曜の朝食がすむと、二十分とはたたないうちに、塾内はもの音一つしないほど、しんかんとなってしまったのである。
 みんなが出はらってしまうと、次郎も一週間ぶりで解放された時間を持つことができた。いつもだと、さっそく読書をやるか、空林庵《くうりんあん》に行って、朝倉先生夫妻とゆっくり話しこむかするはずだったが、今日は、事務室の隣《とな》りの自分の部屋で、机によりかかったまま、ながいことひとりで考えこんでいた。
 机の上には、二三日まえ、兄の恭一《きょういち》から来たはがきが、文面を上にしてのっていた。それ
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