決して深い心だとはいえまい。……もっとも、君らの中には、内心それをいくらか恥じていたものも、おそらく幾人《いくにん》かはあったであろう。気がとがめるといった程度なら、あるいは君らのすべてがそうであったのかもしれない。しかし、それも結局は何の役にもたたなかったのだ。では、なぜ役にたたなかったのか。今、君らに真剣《しんけん》に考えてもらいたいのはこの一点だ。――」
 静かな空気の中を、えぐるような沈黙の数秒が流れたあと、朝倉先生の言葉が沈痛《ちんつう》につづけられた。
「私に言わせると、それは、君らに、ほんとうの意味で自分をたいせつにする心がないからなのだ。言いかえると、君らには、自分で自分をたいせつにする自主性というものがまるでない。さらに言いかえると、君らは多数をたのみ、多数のかげにかくれて、何よりもたいせつな自分の良心を眠らせることに平気な人間なのだ。私は、現在の日本人の大多数がもっている最大の弱点を、君らの今朝の起床の様子でまざまざと見せつけられたような気がして、全く、暗然《あんぜん》とならざるを得なかったのだ。――」
 次郎は、朝倉先生が、開塾最初の朝の訓話《くんわ》で、これほど
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