次郎は、しかし、それどころではなかった。かれは、もう、先生のつぎの言葉が、槍《やり》の穂先《ほさき》のような鋭さで、自分の胸にせまっているのを感じ、かたく観念の眼をとじていたのだった。
「ところで――」
 と、先生は、かなり間をおいてから、つづけた。
「私は、率直《そっちょく》に言うと、君らが私の期待を裏切らないだろうということについて、残念ながらまだ十分の自信を持つことができない。というのは、今朝の板木が、あまりにもながく鳴りつづけたからだ。あれほど辛抱づよく、しかも、あれほどおだやかに鳴りつづけたということは、一方では、あれを打っていた一人の塾生の心の深さを物語るが、また、一方では、その一人をのぞいた多数の塾生の心の浅さを物語ることにもなったのだ。君らの大多数は、板木を打った一人の塾生があれほどの誠意を示したにもかかわらず、容易にそれにこたえようとはしなかった。君らにとっては、その誠意よりも、寝床《ねどこ》の中のぬくもりのほうがはるかにたいせつだったのだ。あたたかい寝床の中で、うつらうつらと、できるだけ眠《ねむ》りを引きのばすことを、人間の誠意以上に、たいせつにする心、これは
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