ていたのである。
遥拝がすむと、おたがいの朝のあいさつをかわし、そのあと、もう一度静坐に入った。そして、それが三分もつづいたころ、朝倉先生は、自分も静坐|瞑目《めいもく》のまま、おもむろにつぎのような話をした。
*
越前永平寺《えちぜんえいへいじ》に奕堂《えきどう》という名高い和尚《おしょう》がいたが、ある朝、しずかに眼をとじて、鐘楼《しょうろう》からきこえて来る鐘《かね》の音《ね》に耳をすましていた。和尚は、今朝の鐘の音には、いつもにない深いひびきがこもっているような気がしたのである。
やがて、最後のひびきが、澄《す》みわたった空に消え入るのを待って、和尚は侍僧《じそう》を呼んでたずねた。
「今朝の鐘をついたのはだれじゃな。」
「新参《しんざん》の小僧《こぞう》でございます。」
「そうか。ちょっと、たずねたいことがある。すぐ、ここに呼んでくれ。」
間もなく、侍僧に伴《ともな》われて、一人のつつましやかな小僧がはいって来た。和尚は慈愛《じあい》にみちた眼で、小僧を見ながらたずねた。
「ほう、お前か、今朝の鐘をついたのは。……で、どのような気持ちでついたのじゃ
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