、事務室にはいり、すぐ掃除《そうじ》をはじめたが、その時になって、大河のにっと笑った顔と、そのあとで言った言葉とが、変に心にひっかかりだした。
塵《ちり》を廊下に掃《は》き出すと、かれはバケツに水を汲《く》んで来て、寝間《ねま》と事務室とに雑巾《ぞうきん》がけをはじめた。窓をすっかりあけはなった、まるで火の気のない、二月の朝の空気は、風がないためにかえってきびしく感じられた。これまでたびたび同じ経験をつんできたかれにとっても、仕事は決してなまやさしいものではなかった。どうかすると、手がしびれるようにかじかんで、雑巾が思うようにしぼれず、また、拭《ふ》いたあとの床板が、つるつるに凍ることさえあるのだった。かれは、しかし、二つの室をすみからすみまで、たんねんに拭《ふ》きあげた。
もう、そのころには、廊下を行き来する塾生たちの足音も頻繁《ひんぱん》になり、ほうぼうから、わざとらしいかけ声や、とん狂《きょう》な笑い声などもきこえていた。ゆうべの懇談会で分担《ぶんたん》をきめ、かれら自身の室はもとより、建物の内部を、講堂や、広間や、便所にいたるまで、全部|清掃《せいそう》することに申し合わせ
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