り向いて槌をわたした。次郎は、すぐ大河に代わって板木を打ちだしたが、その打ちかたは、一つ一つの音が余韻《よいん》をひくいとまのないほど急調子で、いかにも業《ごう》をにやしているような乱暴さだった。
 大河は、あきれたように、その手ぶりを見つめて立っていた。次郎は、しかし、それには気づかす、おなじ乱暴な調子で、つづけざまに三四十も打つと、急にぴたりと手をやすめた。そして、半ば笑いながら、言った。
「板木を打つのは、もうこれでおしまいにしましょう。これで起きなけれぼ、ほっとくほうがいいんです。」
 ところで、かれの言葉が終わるか終わらないうちに、二三の室から、急にさわがしい人声や物音が、廊下をつたってきこえだした。
「起きだしたようです。もうだいじょうぶですよ。」
 次郎は、そう言って、槌を柱にかけ、事務室のほうにかえりかけた。すると、その時まで眉根《まゆね》をよせるようにしてかれの顔を見つめていた大河が、急に、真赤な歯ぐきを見せ、にっと笑った。そして、
「なんだか、ひどく叱《しか》りとばされて、やっと起きた、といったぐあいですね。」
「はっはっはっ。」
 次郎は愉快《ゆかい》そうに笑って
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