そうはならなかった。これに反して、飯島は最初から、ごく器用に正しい姿勢をとっていた。もしかれが、おりおりうす目をあけて朝倉先生の顔をのぞくようなことさえしなかったら、かれの静坐は、塾生の中でも、最もすぐれた部類に属していたのかもしれなかったのである。
 静坐は十分足らずで終わった。
 次郎は、いつになくつかれていたが、床《とこ》についてからも、なかなか寝《ね》つかれなかった。

   六 板木の音

 コーン、コーン、――コーン、コーン。
 凍《こお》りついたような冷たい空気をやぶって、板木が鳴りだした。そとはまだ、真っ暗である。白木綿《しろもめん》の、古ぼけたカーテンのすき間から、硝子戸《ガラスど》ごしに、大きな星がまたたいているのが、はっきり次郎の眼に映った。
 かれは、あたたかい夜具をはねのけ、勢いよく起きあがって、電燈《でんとう》のスウィッチをひねった。その瞬間《しゅんかん》、枕時計《まくらどけい》がジンジンと鳴りだした。きっかり起床《きしょう》時刻の五時半である。
 いそいで、寝巻《ねまき》をジャンパーに着かえ、夜具を押し入れにしまいこむと、ぞんぶんに窓をあけた。風はなかった
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