顔を見まわして言った。
「強制されると、どんな不合理なことにでも盲従《もうじゅう》する。おたがいの相談に任されると、なまけられるだけなまける工夫をする。もしそういうことが人間にとってあたりまえのことだとして許されるとすると、いったい人間の自主性とか良心とかいうものは、どういう意味をもつことになるんだ。いや、いつになったら、人間はおたがいに信頼《しんらい》のできる共同生活を営《いとな》むことができるようになるんだ。」
 先生の言葉の調子は、はげしいというよりは、むしろ悲痛だった。
「私は、君らを、良心をもった自主的な人間としてここに迎《むか》えた。だから、かりに君ら自身が、君らを機械のように取りあつかってくれとか、犬猫《いぬねこ》のようにならしてくれとか、私に要求したとしても、私には絶対にそれができない。私は、あくまで、君らが人間であることを信じ、君らに人間としての行動を期待するよりほかはないのだ。むろん私も、人間の世の中に、強制の必要が全然ないとは思っていない。弱い人間にとっては、やはりそれが必要なこともあるだろう。時には、それが弱い人間を救う唯一《ゆいいつ》の方法である場合さえあるの
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