なかったんです。これからもないつもりです。ぼくは、今日、平木中佐|殿《どの》が言われたように、なにごとにでも死ぬ覚悟でぶっつかるつもりでいるんです。なまぬるいことは、ぼく、大きらいです。」
「よろしい。私は、だから、それはそれとしていい覚悟だと言っているんだ。しかし、君はだれかに鍛えてもらうことばかり考えて、自分で自分を鍛える努力を惜しんでいるんではないかね。」
「そんなことはありません。ぼくは、自分を鍛えたいと思ったからこそ、自分で希望して、わざわざ遠い田舎からこんなところにも出て来たんです。」
「しかし、自分の生活のことを自分で考えてみようともしないで、人に計画してもらおうとしているんだろう。それで自分の力を惜しんでいないといえるかね。」
田川は返事に窮《きゅう》したらしく、黙《だま》りこんだ。しかし、心で納得《なっとく》したようには、すこしも見えなかった。かれは、それまで膝の上に突っぱっていた両腕を組んで、天井《てんじょう》を仰《あお》いだ。
朝倉先生は、注意ぶかくその様子を見まもっていたが、
「田川君――」
と、ものやわらかな、しかし、どこかに重みのある声で呼びかけた。
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