手の顔から眼をはなして、塾生名簿を見ながら、
「君は何室だったかね。」
「第一室です。」
「名前は?」
「田川大作。」
田川の返事は、しだいにぶっきらぼうになっていった。
名簿には、「熊本県、二十六歳、村農会書記、村青年団長、農学校卒」とあり、備考欄に、「歩兵|伍長《ごちょう》、最近満州より帰還《きかん》」とあった。塾生たちも、しきりに名簿と本人の顔とを見くらべた。本人は、しかし、それでてれた様子はすこしもなく、相変わらず力《りき》みかえって、朝倉先生の顔を見すえていた。
朝倉先生は、名簿から眼をはなして、田川と視線をあわせながら、
「君の覚悟は、なるほどいい覚悟だが、しかし、そういう覚悟は、何かとくべつの場合の覚悟で、日常の生活を建設するための覚悟ではないようだね。第一、自分というものをあまりに軽んじすぎている。というよりは、自分の力を惜《お》しみすぎている、と言ったほうが適当かもしれないがね。」
「それはどうしてです? ぼくは――」
と、田川は、ふるえる唇《くちびる》をつよくかんだあと、
「ぼくは軍隊生活をやって来た人間ですが、自分の力を出しおしみしたことなんか、一度だって
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