れたとさえ思っている。元来、環境《かんきょう》というものは、それが不合理であっても、無理に小細工をして変えようとしてはならないものなんだ。まずその環境をそのまま受け取って、その中で自分を練りあげる。それでこそほんとうの意味で環境に打《う》ち克《か》てるし、またそれでこそ、どんな不合理も自然に正されていくだろう。私は何事についても、そういう考えから出発したいと思っている。暴力に訴《うった》える社会革命に私が絶対に賛成できないのも、根本はそういうところにあるんだ。」
次郎はじっと考えこんだ。すると田沼先生は急に笑いだし、
「つい、話がとんでもない、大きな問題に飛躍《ひやく》してしまったね。しかし、真理は問題の大小にかかわらないんゼ。小細工はいわば小さな暴力革命だし、暴力革命はいわば大きな小細工だからね。……大きな小細工なんて、言葉はちょっと変だが。……とにかく君は、君のやるべきことを落ちついてやって行くことだ。大河に気おくれして仕事がにぶってもならないし、かといって、大河に心で兄事《けいじ》することを忘れてもならない。世間には、先生よりも弟子《でし》のほうが偉《えら》い場合だってよくある
前へ
次へ
全436ページ中124ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
下村 湖人 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング