少なくはなかった。ただ大河無門だけは、そうしたざわめきの中で、その半眼にひらいた眼を、ながい夢《ゆめ》からでもさめたように、ゆっくり見ひらき、しずかに頭をさげて中佐に敬意を表したのだった。
次郎の眼は、いつまでも大河無門にひきつけられていた。そのために、かれは、中佐がどんな顔をして塾生たちの「不規律」な敬礼をうけ、どんな歩きかたをして自分の席に戻《もど》って行ったかを観察することができなかったし、また、閉式を告げるかれの役割を果たすのに、いくらか間がぬけたのではないかと、かれ自身心配したぐらいであった。
式が終わると、恒例《こうれい》によって、塾生と中食をともにすることになっていた。今日は朝倉先生の式辞がいつもより長かったうえに、平木中佐の祝辞がそれ以上に長かったため、時刻もかなりおくれていたし、一同式場を出るとすぐ、広間に用意されていた食卓《しょくたく》についた。今日は荒田老もめずらしく上機嫌《じょうきげん》で、「わしはめしはたくさんです」などと無愛想《ぶあいそう》なことも言わず、自分からすすんで平木中佐をさそい、その席につらなったのである。
食卓では、荒田老がすすめられるまま
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