「ぼくは先生の青年塾にはいるわけには行かないんですか。」
「青年塾に? 君が?」
 朝倉先生はおどろいたように眼を見はった。
「ぼくは、中学校を卒業することなんか、もうどうでもいいんです。先生が青年塾をお開きになるのを知っていながら、普通《ふつう》の中学校にはいるなんて、ぼくはとてもそんな気にはなれないんです。」
「ばかなことをいうものじゃない。私の計画している青年塾は、学校とはまるでちがうんだよ。現に働いている青年たちのために、ごく短期間の、――今のところながくてせいぜい二か月ぐらいにしたいと思っているが、――まあいわば一種の講習をくりかえして行くようなものなんだ。そんなところにはいって、君、どうしようというんだね。」
 次郎はだまりこんだ。かれは自分が想像していた塾とはかなり性質の違《ちが》ったものだということがわかり、ちょっと失望したようだった。しかし、どんな種類の塾にもせよ、その最初の塾生となって、塾風《じゅくふう》樹立《じゅりつ》に協力したいという希望は、やはり捨てたくなかったのである。
「そりゃあ、私としても、一度は君に一般《いっぱん》の勤労青年と生活をともにする機会を
前へ 次へ
全436ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
下村 湖人 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング