う》におちているように思われた。かれは、朝倉夫人のそんな様子を見ると、つい眼がしらがあつくなって来るのだった。
かれは、しかし、そうしているうちに、いくらか自分をとりもどすことができ、眼を来賓席のほうに転じた。すると、そこには、当惑《とうわく》して天井《てんじょう》を見ている顔や、にがりきって演壇をにらんでいる顔がならんでいた。しかし、どの顔よりもかれの注意をひいたのは、相変わらず木像のように無表情な荒田老の顔と、たえず皮肉な微笑《びしょう》をもらして塾生たちを見わしている鈴田の顔であった。
鈴田の顔を見た瞬間、次郎は、自分にとってきわめてたいせつなことを、いつの間にか忘れていたことに気がついて、はっとした。中佐の言葉に対する塾生たちの反応《はんのう》、それを見のがしてはならない。できれば一人一人の反応をはっきり胸にたたみこんでおくことが、これから朝倉先生に協力して自分の仕事をやって行く上に何よりもたいせつなことではないか。
かれの視線は、そのあと、忙《いそが》しく塾生たちの顔から顔へとびまわった。どの顔もおそろしく緊張している。眼がかがやき、頬《ほお》が紅潮し、唇《くちびる》が
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