し、足もとに用心しながら部屋にはいって来た。そして、二人の机のそばまでやって来ると、しばらくぐずついていたが、やがて電燈がぱっとともった。二人とも、人影を見た瞬間、てっきりお祖母さんだと思ったが、果してそうだったのである。
次郎はすぐ夜具を頭からかぶった。恭一は神経的に眼をぱちぱちさせて、お祖母さんを見た。お祖母さんの頬から喉《のど》にかけての肉が、蛙が息をつく時のように動いている。
お祖母さんは、二人の様子をじっと見くらべてから、恭一の枕もとに坐った。そして、強いて自分を落ちつけているらしい声で、
「恭一や、だから、言わないこっちゃないだろう。お祖母さんは、お前たちの話をみんな聞いていたよ。次郎といっしょに寝たりすると、どうせろくなことは覚えないのだからね。」
恭一は何と思ったか、くるりと起きあがって、敷蒲団のうえに坐った。寝巻一枚のままだった。
「風邪をひくじゃないかね。どてらをおかけよ。それに、もうこんなところに寝るのは、よした方がいいんだから、階下《した》においで。蒲団はすぐ運ばせるから。」
恭一は、どてらを着たが、そのまま動かなかった。
「やはり、ここに寝たいのかい。
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