恭一はうなずいた。
「ああ、あ。何というわからない子になったのだろうね。ふだんはあんなによくお祖母さんの言うことをきく子だのに、次郎といっしょになると、こうも変るものかね。」
 恭一の青白い頬がぴくぴくとふるえた。何か言おうとするが、唇のところで声がとまるらしい。彼は、次第に首を深くたれた。お祖母さんは、それを自分の言ったことに対するいい反応だと思ったのか、手をのばして彼のどてらの襟を合わせてやりながら、
「さあ、早く階下《した》においで。わるいことは言わないから。いつまでもこうしていると、ほんとに風邪をひくよ。」
「僕、いやです!」
 恭一は、帛《きぬ》をさくような声で、そう叫ぶと、敷蒲団の上につっぷして、はげしく息ずすりをした。
 お祖母さんは、ぎくりとして、しばらくその様子に眼をすえていたが、急に自分も恭一の背中に顔を押しあてて、泣き出した。
「恭一や、お前がそれほど階下《した》におりるのが、いやなら、……もう、むりにおりておくれとは……言わないよ。……だけど、だけど、お前、さっき、なるだけお祖母さんのそばにいないようにするって、お言いだったね。……あれは、ほんとうかい。そ
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