もんだから。」
「泉水の鯉って緋鯉かい。」
「ううん、本当の雨鯉さ。大っきいのがいるぜ。」
「ふうむ。そして、その人、何て言ってどなったんだい。」
「ただこら[#「こら」に傍点]あって言ったきりさ。僕、びっくりしてすぐ鯉を逃がしてやったら、惜しかったなあって、笑ってたよ。」
「次郎ちゃんがつるのをどっかから見てたんだね。」
「見てたんだよ。座敷から。でも、僕にはとてもつれないと思って、安心していたんだろう。」
「そりゃ面白かったなあ。次郎ちゃんより、そのお祖父さんの方がびっくりしたんだろう。」
 二人は笑った。それから、恭一は、しばらく何か考えているらしかったが、
「お祖母さんもいるんかい。」
「いるよ。豚みたいに大っきいお祖母さんだけれど、やさしいよ。それから、附属の先生もいるんだ。僕、その人も好きさ。」
「附属の先生? ふうむ……それから?」
「三人きりさ。僕たちの母さんになる人まで合わせると四人だけど。」
「附属の先生って、いくつぐらいの人?」
「よくわかんないけど、三十ぐらいかなあ。……弟だろう、母さんになる人の。……徹太郎っていうんだってさ。」
「母さんになる人、何ていう名?
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