神経は、お祖母さんのそんな物の言い方を、正面からはねかえすことが出来なかったのである。
「だって、どうせ次郎ちゃんは座敷にいっしょに寝られないんでしょう。狭いんだもの。」
 恭一はしばらく考えたあと、やっと自分の言うことが見つかったらしかった。
「そりゃあ寝られないとも、八畳に四人はね。」
「すると、次郎ちゃんはどこに寝るんです。」
「そんなこと、お前が心配しなくてもいいじゃないかね。次郎はどこにだってねるよ。」
「やっぱり父さんとこにねるんですか?」
「それが好きなら、それでもいいさ。」
「でも、僕と俊ちゃんがいっしょで、次郎もやんがべつになるのは、いけないと思うんです。」
「それがどうしていけないのかい、どうせ三人のうち一人はべつになるんだろう。」
 お祖母さんは、兄弟三人をいっしょにして、自分がべつの部屋にねることなんか、ちっとも思いつかないらしい。
「一人だけ別になるんなら、僕がならなくちゃあ。」
 恭一はいつになく吐き出すような調子で言った。
「お前、どうしてそんなことをお言いだい。お祖母さんといっしょのお部屋に寝るのが、いやにでもなったのかい。」
「ううん、そんなことありま
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