心の中でそう思いながら、このごろにない快い興奮を感じた。
間もなく、みんなは一軒の茶店にはいって弁当をひらいたが、その頃には、次郎はもうほかの児童たちといっしょになって、いつものとおり元気よくものを言っていた。
七 枕時計
入学試験の第一日は無事にすんだ。その日は、次郎の得意な読方や綴方だったので、彼は成績にも十分の自信を得て帰って来た。
第二日目は算術だった。
算術は、どちらかというと、次郎には苦手なのである。恭一はそれを心配して、次郎が正木から帰って来たその日から、ほとんどつきっきりで、その方の勉強を手伝ってやった。二人は頬をよせあって問題を解いた。次郎は、学校で先生に教わるのとは何かちがった、身にしみるような新しい気持で勉強に熱中するのだった。
だが、その試験も明日にせまると、恭一は、いかにも心得顔に言った。
「算術の試験には、うんと頭をやすめて置く方がいいんだぜ。だから、きょうは早くねようや。」
で、九時近くになると、二人は床につく用意をはじめた。
二階の勉強部屋が、二人の寝間だった。二人は自分たちの机のまえに、ほとんど重なりあうようにして、床をのべる
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