くお頼みいたします、徹太郎の嫁をもらうにも、あれが居りましては、何かと工合が悪うございましてな。」
 と、正直なところを言って、俊亮の前に丁寧に頭をさげた。その様子が、俊亮をほろりとさせた。
 徹太郎が帰って来たのは、もう暗くなるころだった。彼は師範出の秀才で、附属の訓導をつとめて居り、一里ほどのところを自宅から通っている。今年ちょうど三十歳で、眼鼻立のいかついところが、運平老そっくりである。背も高い。俊亮との初対面の挨拶も、きびきびしていて気持がよかった。
「次郎君のことは、父からいろいろ聞いています。こないだは、あいにく学校の用件で出張していたものですから、お会い出来なくて残念でした。これから僕も出来るだけお相手をしてみたいと思っています。中学校の入学試験も、もう間もなくですが、それがすみましたら、ひとつ山登りにでもおつれしましょうかね。」
 彼は俊亮に酒をすすめながら、しきりに次郎のことを話題にした。
 俊亮もつい気持よく盃を重ねて、九時近くに大巻の家を辞《じ》した。彼は自転車で寒い風を切りながら、きょうの訪問が決して無駄ではなかったと思い、重荷をひとつおろしたような気がした。が
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