り次郎ちゃんに負けちゃったよ。」
 と、恭一が、その時、膝を乗り出すようにして、
「しかし、朝倉先生はやっぱり偉いなあ。僕、これまで偉いとは思っていたんだが、それほどだとは思っていなかったよ。……そして、その五年生って誰だい。」
「ううん、誰にも名前は言えないよ。」
 次郎は、うつむいたまま答えた。
「そうか、多分あいつだろうと思うけれど。……しかし、まあいいや、誰だって、よくなりさいすりゃ、いいんだから。」
 俊亮は、その時、やっと眼を見開いて、
「父さんも、もう次郎には負ける。うちで一番偉いのは次郎らしいね。これも乳母やのおかげかな。」
「坊ちゃん!……」
 と、お浜はやにわに次郎に飛びついて、その肩を抱きすくめた。
 お鶴は顔を赧らめて見ており、俊三はきょとんとして眼を見張った。

    一九 夜の奇蹟

 お浜には、しかし、まだ何か割り切れないものが残っているらしかった。
「一晩泊めていただくつもりで、あがりましたの。」
 彼女は、来ると、すぐ、そう言っておきながら、夕飯ごろになると、お鶴に向かって、
「でも、やっぱり、おいとましましょうかねえ。」
 などと言って、お祖母さん
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