五年生も、こうなっては駄目だね。……まあ、しかし、折角の詰問だから、答えてやろう。俺がいいかげんな当てずっぽを言っているように思われてもつまらんからな。……貴様は、さっき、赤い日傘をさした女を眺めていたんだろうが。……どうだ、参ったか。」
次郎はかすかに笑った。しかし、それは相手に気づかれるほどではなかった。彼はすぐ、いかにも解《げ》せないといった顔をして、言った。
「そんな女が通ったんですか。」
「とぼけるな!」
と、三つボタンは大喝《だいかつ》して拳をふりあげた。もういよいよ我慢がならんといった彼の顔つきだった。
が、その時には、次郎もすでに二三歩うしろに身をひいていた。しかも、彼は、彼の右手に、二寸余の白い刃を見せて、しっかと小刀を握りしめていたのである。
次郎は、その小刀を腰のあたりに構えながら、青ざめた微笑をもらした。そして、唾を一息ぐっとのみこんだあと、吐き出すように言った。
「五年生だと、女が通るのを見ていいんか!」
次郎のあまりにも思い切った態度や言葉づかいは、病的な伝統をそのまま上級生の正義だと心得ている三つボタンにとっては、全く信じられないほどの無礼さだっ
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