、次郎の苦心も、実際並たいていではなかったのである。彼はちょっと門口を出るのにも、必ず制服制帽をつけていた。街角では、一応四方を見渡して、五年生の姿が見えると、相手がどこを見ていようと、それに対してきちんと敬礼をした。むろん、校則は、どんな些細なことでもよく守った。その点では、人一倍細心な恭一ですら、彼の几帳面《きちょうめん》さをおりおり冷やかしたくらいであった。その代り、彼は、今後五年生に無法な暴行を加えられたら、退学処分の危険を冒しても、思いきって反抗を試みようと、固く心に誓っていた。彼が彼の小刀《ナイフ》を筆入に入れないで、いつも衣嚢《かくし》に入れていたのも、実はそのためだったのである。
彼は、一年生の全部とはいかなくとも、少くとも彼の組の生徒だけでも、彼と同じ気持になってもらうことを、心から望んでいた。彼はある日、五六名のものに真剣にその気持を話してみた。しかし、誰もが反対もしなければ賛成もしなかった。落第して同じ一年にとどまっていた一生徒などは、嘲るように「ふふん」と答えたきりだった。で、彼はそれっきり、誰にもそのことを言わなくなってしまった。
何よりも彼がなさけなく思
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