の一年のうちに、ほんとうに偉くなるにはどうすればよいか、といつもそれを考えました。これは僕には非常にためになったと思います。僕はこれまで、人に可愛がられたいとばかり思っていましたが、それはまちがいだったということがわかりました。それで、僕はもうどんなことがあっても、腹を立てたり悲しんだりはしないつもりです。
僕は、これから、ほんとうに正しい人間になりたいと思います。勇気のある人間になりたいと思います。そして、誰にも可愛がられなくても、独りで立っていける人間になりたいと思います。中学校にはいってからも、そのつもりで勉強していく決心です。
けれども、僕はばあやだけにはいつまでも可愛がってもらいたいと思います。ばあやはいつも僕のそばにはいないのだから、どんなにばあやに可愛がってもらっても、僕はちっとも弱くはならないと思うのです。
ではごきげんよう、さようなら。」
お浜宛の手紙を書き終ったあと、彼は春子にも、せめて絵はがきででも、中学校に入学したことを知らしてやりたいと思った。しかし、彼女の東京の住所を書いたのを、もうなくしてしまっていたので、今度竜一にあって、それをたしかめてから書く
前へ
次へ
全305ページ中200ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
下村 湖人 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング