来れんからな。」
次郎は、そう言われて、思わずじっと父の顔を見つめた。そして、
「ううん、絵はがきだけで、いいんです。」
と、十枚ほどの絵はがきを買うと、自分から先に立って書店を出た。何か、父の愛にあまえたくない気持だったのである。
書店を出て半丁ほど行ったころ、俊亮がふとたずねた。
「次郎は財布をもっているのか。」
「ううん。」
「じゃあ、一つ買ってあげよう。」
「僕、財布なんかいりません。」
「でも、もう中学生だから、買いたいものがすぐ自分で買えるように、いくらか小遣《こづかい》を持ってる方がいいんだ。」
次郎は答えないで、自分の足先ばかり見て歩いた。
小間物屋のまえに来ると、俊亮は默ってその中にはいった。次郎がその小さな飾窓《かざりまど》のまえに立って待っていると、俊亮は間もなく、小さな蟇口《がまぐち》を、ぱちんと音をさせながら出て来た。そして、それを次郎に渡しながら、
「一円ほど入れといたよ。なくなったら母さんにそう言えばいい。まあ、しかし、小遣は月二円ぐらいで我慢するんだな。」
二円という金は、次郎にとってはむろんすくない金ではなかった。それが、これから毎月自分で
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