い。それに、このごろ恭ちゃんといっしょにいると、なぜかときどき恐いような気にさえなる。)
はっきりとではないが、彼の頭の中には、そんなような疑問が往復していた。幼年時代からの運命に培《つちか》われて来た彼の心理の複雑さが、こうして、そろそろと自覚的な仂きをみせるまでに、彼も今は成長していたのである。
饑《う》えた者が食物をつかもうとして、われを忘れて手をのばしている間は、まだ仕合わせである。だが、手をのばした自分の姿の弱さや醜さに嫌悪《けんお》を覚え、ひもじさをこらえて、じっと立ちすくんだ時のみじめさは、どうであろう。それを思うと、次郎はある意味では、これまでにない大きな不幸、しかも、周囲の人たちに同情してもらうにはあまりに底に沈みすぎた不幸に、自分自身を押しやっていたともいえるだろう。
夕雲に包まれた春の陽光は、一足ごとに鈍くなった。次郎の靴音も重かった。
ふだんなら、二里や三里は彼にとって何でもない道のりだったが、正木についた時の彼は、誰の眼にも、疲れきっているように見えた。そしてみんなが不思議がっていろいろたずねても、彼は、
「何でもないよ。」
と答えるきりで、ともする
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