思い出にまじって、彼の胸には、何か割りきれないものが残っていた。それは運平老に絵の話を聞かされたり、徹太郎に質問されて、あいまいな答えをしたりした時から、そろそろ芽を出していた感じだったが、一人になってその時のことを思うと、いよいよそれが重くるしく彼の胸をおさえつけるのだった。
 これまで、彼が不快な思いをする時には、その原因はいつも周囲の人にあったが、この時だけはそうでなかった。彼は自分自身に、ある大きな物足りなさを感じはじめていたのである。
(自分は、自分を可愛がってくれる人が、なぜこんなに、ほしいのだろう。そして恭ちゃんや俊ちゃんが誰かに可愛がられているのを見ると、なぜいつもいやな気持になるんだろう。また自分は、人が正直でないと誰よりも腹が立つくせに、自分はなぜ嘘をついたり、ごまかしたりするんだろう。これが大巻のお祖父さんの言った「迷い」というのだろうか。)
(自分は卑怯なのだろうか。これまで、恭ちゃんなんかより自分の方がずっと強いと思っていたが、何だかあやしくなって来た。恭ちゃんはいつも真っ直な心で押しとおしているし、心にもないことを言ったりして、人に可愛がってもらおうとはしな
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