、ちょっと考えていた。
すると次郎は、
「さようなら。」
と、だしぬけに身を引いて、自分の行く方角にさっさと足を運び出した。
恭一は、次郎が小半町もはなれるまで、突っ立って彼を見おくっていたが、やっと気がついたように、
「さようなら!」
と叫んだ。次郎もふりかえって、もう一度、
「さようなら!」
と叫び、それから急に足を早めた。
ちらほら咲き出していた菜種の花が、うす日をうけて膚《はだ》寒い春風の中にそよいでいた。次郎にはいやにそれが淋しかった。二里あまりの道を、彼はうつむきがちに歩いた。そして考えるともなく昨日からのことを考えはじめた。
本田の家でのことを思うと、彼の気持はめちゃくちゃだった。夢中で牛鍋をつついた時の喜びでさえ、今はかえってにがい思い出でしかなかった。それにくらべて、大巻の家の空気は何という明るさだったろう。それは同じ人間の世界だとは思えないほどちがった世界で、誰も彼もが好意にあふれ、すべてが賑やかで、しかも力にあふれていた。次郎は、大巻の家のことを考えると、それがお芳とどういう関係の家であるかも忘れてしまうくらいであった。
ところで、大巻の家の楽しい
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