るような気がするのだった。恭一は独りごとのように、
「僕、教えてもらえるんなら、ほんとうに稽古をしてみようかなあ。」
「絵をかい? 大巻のお祖父さんに。」
「うん。町からだと近いんだから、僕、いつでもこれるよ。」
 次郎はまた默りこんだ。恭一は、しかし、今度は少しもそれを気にしなかった。そしてしきりに、大巻のお祖父さんにもっと近づいてみたいような話をした。
 別れ道に来ると、恭一は立ちどまってたずねた。
「こんどは、いつ来る?」
「わかんないや。」
 恭一には、それがいかにも投げやった調子にきこえた。
「町に来るの、いやなんかい。」
「…………」
 次郎は眼を伏せた。
「ねえ、次郎ちゃん――」
 と恭一は次郎の肩に両手をかけて、
「負けちゃあ、つまんないよ。僕たち、大巻のお祖父さんが描いた蘭になるんだ。誰にだって負けるもんか。正しい人を憎む人があったら、その人が悪いさ。僕、そんな人を軽蔑するよ。お祖母さんだって、母さんだって。」
 次郎は涙ぐんでいたが、
「僕、憎まれたってもう何ともないよ。……僕、これから正直になるんだい。」
 恭一は、次郎の言った言葉の前後の関係が、はっきりしなくて
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