と、何かをじっと見つめがちになるのだった。
一二 考える彼
さて、読者の中には、次郎がいつまでも同じ年頃に停滞《ていたい》しているのを、いくぶんもどかしく思っている者があるであろう。考えてみると、次郎は、母に死に別れてから、まだやっと半年を少しこしたばかりである。話の進行は、実際、のろすぎたようだ。次郎に一日も早く恋をさせたり、広い世間を見させたりしたがっている読者のためには、私は私の物語をもっと急ぐべきであったかも知れない。
だが、誰もが知っているように、人間の「運命」の波というものは、恋をする時とか、広い世間と取っくみあう時とかばかりに、高まって来るものではない。次郎のように、まだ生まれたばかりの時に、一生のうちの頃も高い「運命」の波をくぐりぬけなければならない人も、ずいぶん多いのである。そして、私がこの物語を、単なる興味本位の小説に仕組もうとしているのでなく、次郎という一個の人間の生命を、「運命」と「愛」と「永遠」との交錯《こうさく》の中に描こうとしているかぎり、私は、この半年ばかりの彼の生活についても、そう無造作に筆を省《はぶ》くわけにはいかなかったのである。と
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