ぐ店に走って行った。
「店の品じゃ可笑《おか》しくはないかい。それに重たいだろうにね。」
お祖母さんは、店の壜詰棚が、このごろ淋しくなっているのをよく知っていたのである。
「なあに――」
と、俊亮は一旦火鉢のはたに坐って、ひろげたままになっていた手紙を巻きおさめながら、
「何か、次郎にやるものはありませんかね。」
「次郎に? ありませんよ。」
「食べものでもいいんです。……もしあったら、お祖母さんからやっていただくといいんですが……」
お祖母さんは、じろりと上眼で俊亮を見た。それから、つとめて何でもないような調子で言った。
「飴だと少しは残っていたかも知れないがね。でも、珍しくもないだろうよ。毎日次郎にもやっていたんだから。」
俊亮は、もう何も言わなかった。そして、巻煙草に火をつけて、吸うともなく吸いはじめた。すると、その時まで默っていた恭一が、お祖母さんの方を見ながら、用心ぶかそうに、
「僕、次郎ちゃんに、こないだの万年筆やろうかな。」
「歳暮《くれ》に買ってあげたのをかい。」
と、お祖母さんは、とんでもないという顔をした。
「ええ。」
「お前、どうしてもいると言ったから、
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