買ってあげたばかりじゃないかね。」
「僕、赤インキをいれるつもりだったんだけれど、黒いのだけあればいいや。」
「また、すぐ買いたくなるんじゃないのかい。」
「ううん、色鉛筆で間にあわせるよ。」
「でも、次郎は万年筆なんかまだいらないだろう。」
「いらんかなあ。でも、次郎ちゃん、ほしそうだったけど。」
「あれは、何でも見さえすりゃ、ほしがるんだよ。ほしがったからって、いちいちやっていたら、きりがないじゃないかね。」
お祖母さんは、恭一に言っているよりは、むしろ俊亮に言っているようなふうだった。
恭一は默って俊亮の顔を見た。俊亮は、巻煙草の吸いがらを火鉢に突っこみながら、
「お前は、次郎にやってもいいんだね。」
「ええ……」
と、恭一は、ちょっとお祖母さんの顔をうかがって、あいまいに答えた。
「じゃあ、やったらいい。お前のは、また父さんが買ってあげるよ。」
お祖母さんは、ひきつけるように頬をふるわせた。そして、急にいずまいを正しながら、
「俊亮や、お前は、あたしが次郎にやりたくないから、こんなことを言うとでもお思いなのかい。あたしはね、どの子にだって、いらないものを持たせるのは、よ
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