ゃないか。」
「そうかなあ。」
「次郎ちゃんは、そう思わなかった?」
「…………」
次郎は眼を伏せた。そして、亀の子煎餅を指先で砕《くだ》いては、鉢におとした。涙がこみあげて来るような気持だったが、彼はやっとそれをこらえた。
「僕、あんな人、きらいさ。」
恭一は吐《は》き出すように言って、急に煎餅をぼりぼり噛み出した。
次郎は、しかし、すぐ恭一に合槌をうつ気にはなれなかった。彼には、何かしら未練があった。さっき立ちがけに見たお芳の眼の表情も思い出されていた。
「じゃあ、恭ちゃんも、可愛がって貰えないの?」
次郎は妙に用心深い眼をしてたずねたが、それには、かなり複雑《ふくざつ》な気持がこめられていた。恭一が可愛がられていないことは、彼としては安心なことのようにも思えたし、また、それだけお芳の愛が俊三に集中されていることのようにも思えたのである。
「僕?」
と恭一は、いかにも冷たい微笑を浮かべて、
「僕は誰よりも大事にしてもらうんだよ。僕、それがいやなんさ。」
次郎には、その意味がわからなかった。しかし、恭一はすぐつづけて言った。
「母さんはね、次郎ちゃん、お祖母さんの言うとお
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