て、さっさと階段を上って行った。
次郎もすぐ立ちあがった。彼は立ちがけに、もう一度お芳の顔を見た。
お芳はその時、少し眼を伏せていたが、めずらしく光を帯びた視線を次郎にかえした。それには、たしかにある表情があった。次郎には、しかし、それが何を意味するかは少しもわからなかった。
彼は、同時に、お祖母さんの視線を強く自分の頬に感じたが、それには頓着《とんちゃく》しないで、すぐ恭一のあとを追った。
二階に行くと、二人は菓子鉢を机の上においたまま、しばらくじっと顔を見あっていた。
「次郎ちゃん、がっかりしなかった?」
恭一がやっとたずねた。
「どうして?」
と、次郎はわざととぼけたような顔をして見せたが、その頬の肉は変に硬《こわ》ばっていた。
「だって――」
と、恭一は言いよどんで、菓子鉢を見つめていたが、
「これ食べようや。」
と、急に亀の子煎餅をつまんだ。しかし、二人とも、それを口に運ぶというよりは、それに浮き出している模様をぼんやり眺めている、といったふうだった。
「母さん、変じゃあない?」
「どうして?」
「だって、次郎ちゃんが来ても、ちっとも嬉しそうな顔をしていないじ
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