て、はじめて本田の家に帰って行った。その日、彼は、お芳にもらった靴をわざわざ履《は》いて行くことにしたが、靴はまだ十分に新しかった。小学校では、ふだん靴を用いることになっていなかったので、彼はその日はじめてそれを履いたようなものだったのである。
恭一や、俊三や、お祖母さんの顔にまじって彼を迎えたお芳の顔には、相変らず大きなえくぼがあった。べつだん、飛びつくように彼を迎えるふうはなかったが、正木にいっしょにいたころのお芳を知っていた次郎には、そのえくぼだけで十分だった。で、彼は、本田の家に帰って来てこれまでに感じたことのない、ある新しいあたたかさを感じながら、靴の紐をときはじめたのだった。
するとお祖母さんが言った。
「おや、今日は靴を履いて来たのかい。母さんにこないだいただいたのを、もうおろしたんだね。田舎の小学校では靴はいるまいに。」
次郎は、思わずお芳の顔を見た。お芳は、しかし、何の変った表情も見せてはいなかった。次郎は、安心したような、物足りないような変な気になりながら、上にあがった。
それから、みんなは茶の間の長火鉢のまわりに坐ったが、偶然だったのか、そうなるのが自然だ
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