れとぎれにそう言って、妙にくすぐったそうな顔をした。
三人は、それっきりまた默りこんで、めいめいに何か考えているらしかったが、俊三はそのうちに、つまらなそうな顔をして、ひとり階下《した》におりていってしまった。
すると、間もなく、階段の下から、
「恭一や、ちょっとおいで。」
とお祖母さんの声がきこえた。恭一は、しばらく次郎の顔色をうかがってから、しぶしぶ立って行った。
次郎は一人になったが、べつにそれが気にもならず、また、何でお祖母さんが恭一を階下に呼んだのか、そんなことは考えてみる気もしなかった。彼はいつの間にか、また入学試験のことを思い出していたのである。
(あさっての晩までは、成績の発表はない。だが、母さんが来たら、きっといろいろ訊くにきまっている。それにどう答えたものだろう。いっそ、母さんと入れちがいに、正木に帰ってしまおうか知らん。)
彼はそんなことを考えて、小半時間もひとりで机に頬杖をついていた。
しかし、恭一があまり永いこと帰って来ないので、そろそろそれが気になり出した。で、自分も階下におりてみようかと思ったが、思いきって立ち上る気にはなれなかった。階下に行け
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